『バッドガイズ2』考察|善人の仮面、悪党の矜持。更生という名の「不自由」を脱獄せよ

映画『バッドガイズ』レビュー:夜の街でスーツを着たウルフとスネークがパトカーを背に不敵に笑う、手描きと3Dが融合したスタイリッシュなメインビジュアル。
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総合まとめ

国内平均星評価:3.95/5

評価 :4/5。

海外平均星評価:3.62/5

評価 :3.5/5。

※このチャートは、確認できた国内外の評価サイトのスコアをもとに作成しています。
未評価のサイトは平均に含めていません。あくまで参考としてご覧ください。

⚕️Cinema Prescription

適応:過去のレッテルに縛られ、再出発に臆病な方へ。
副作用:心の檻を脱獄したくなり、負の経験すら愛おしくなります。

あらすじ

前作で華麗なる更生を果たし、英雄として社会に迎え入れられたバッドガイズ一行。しかし、彼らの前に、かつての自分たちを彷彿とさせる狡猾な犯罪組織「バッド・ガールズ」が現れる。引退を余儀なくされていた彼らが、なぜ再び「法の外」へと足を踏み出すのか。更生したはずの魂が、再び野生の呼び声に共鳴する。

References / Data Source: Universal PicturesThe Bad Guys 2 | Official Trailer


【ネタバレ注意】
※本記事では、登場人物や象徴的シーンに触れ、私なりの考察や解釈を掲載しています。これより先はネタバレになりますので、物語を楽しみたい方は鑑賞後の閲覧を推奨します。

本作の白眉は、改心した彼らが「かつての罪深い知見」を社会貢献へ捧げるプロセスにあります。 善人の物差しでは決して測れない「手口の裏側」を読み解き、先手を打つ。それは、清廉潔白な者には見えない「世界の裏側の構造」を知り尽くしているからこそ成せる業です。

絶体絶命の窮地において、自らを鼓舞し、チームワークで難局を突破する姿には、深い感銘を覚えます。一人の限界を認め、仲間を信じる。その泥臭いプロセスは、かつて犯罪者と呼ばれた彼らを、誰よりも気高い「専門家」へと昇華させているのです。

専門スキルの象徴。ウルフ、スネーク、サメ、そして黒い蜘蛛が複雑な金庫の黄金ホログラムを見つめる、知的犯罪プロフェッショナルたちの作戦会議シーン。

言葉を解する動物たちの愛らしい容姿は、私たちの警戒心を軽やかに解きほぐします。しかし、ここで少しイギリス風の意地悪な視点を持ってみましょう。 「もし、これが人間だったら?」 現実のニュースで、大きな過ちを犯した者が再出発を誓う姿に対し、私たちは彼らと同じ熱量でエールを送れるでしょうか。

「一度道を外れた者は永遠に隔離されるべきだ」という、我々の心に潜む冷徹な防衛本能。動物という「フィルター」を通さなければ、私たちは「更生」という重いテーマをエンタメとして楽しむことすらできないのかもしれません。作者の類稀なる楽観主義(あるいは皮肉)が、この擬人化には込められているようです。

『バッドガイズ』のテーマ「不寛容」の象徴。狼の着ぐるみを脱ぐと犯罪者の影が覗き、群衆が冷たく避ける様子を描いた、レッテルと偏見を問う抽象アート。

本作ほどのアクション大作が、日本市場において劇場公開を回避された事実は、文化的な不条理と言わざるを得ません。極上のフルコースを紙コップで提供されるような、慇懃無礼な扱いと言えるでしょう。 しかし、絶望するには及びません。テクノロジーが進化を遂げれば、配信作品は「自宅で劇場を超える体験」へと再定義されるはずです。その時、本作は時代を先取りしすぎた傑作として、本当の意味で再注目されるに違いありません。

配信作品が劇場を超える瞬間。自室でVRゴーグルを装着し、映画『バッドガイズ』の激しい爆発アクションシーンのど真ん中に没入する体験を描いたビジュアル。

関連作品

  • 🎬 前作:『バッドガイズ』(2022年)
    全てはここから始まった。彼らの「悪役時代」を知るための必修科目。
  • 🎬 ピエール・ペリフェル監督作品
    『ビルビー/Bilby』(2018年)- 今作の原点とも言える傑作短編。

🧬 Post-Screening Analysis

「更生」とは、過去の自分を消し去ることではない。かつての過ちや傷跡さえも「自分にしかできないこと」へと転換し、他者のために使いこなす覚悟のことである。檻から出ることは容易だが、社会という名の新たな檻に適応するには、本当の意味での「野生の誇り」が必要なのだ。


⚕️次回の処方箋:Next Review

タンク(Der Tiger)』:鋼鉄の檻の中で、人間性が試される。

第二次世界大戦の最前線、閉塞感の漂う戦車の中。
極限状態に置かれた兵士たちが直面する、敵よりも恐ろしい「己の恐怖」。
鋼鉄の壁に守られながら、崩壊していく彼らの正気。
あなたはその密室で、何を信じ抜くことができるだろうか。

2/15(日) 公開予定
このレビューを書いた人
高瀬 楓(たかせ かえで)
高瀬 楓(たかせ かえで)
映画と余韻の調剤師。| 週末21時の処方箋。
映画と余韻の調剤師|高瀬 楓(たかせ かえで) 映画が残す静かな余韻を、心への処方薬として。 一編の物語を深く味わい、その効能を独自の視点で丁寧に綴る映画レビューサイト《Silver Screen Palette》を主宰しています。 週末の夜21時。 慌ただしい日常を離れ、和紙に染み込む墨色のような、深く穏やかな読書の時間をお届けします。あなたの記憶に寄り添う一編が見つかりますように。
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