映画レビュー

映画『ブルーピリオド』実写版──レビュー芸術の入り口で感じた、驚きと物足りなさ

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【ご安心ください】
※本記事には映画の具体的な結末などのネタバレは含みません。作品のテーマや雰囲気を中心に綴っていますので、未鑑賞の方もお楽しみいただけます。

出典:ワーナー ブラザース ジャパン公式YouTubeチャンネル「映画『ブルーピリオド』公式トレーラー」


あらすじ

(以下、公式サイトより引用)

ソツなく器用に生きてきた高校生・矢口八虎は、美術の授業の課題「私の好きな風景」に困っていた。
悩んだ末に、一番好きな「明け方の青い渋谷」を描いてみた。その時に絵を通じて初めて本当の自分をさらけ出せたと感じ、美術に興味を持ちはじめ、のめりこんでいく。
そして、ついに国内最難関の美術大学への受験を決意するのだが──。
立ちはだかる才能あふれるライバルたち。正解のない「アート」という大きな壁。
経験も才能も持っていない自分はどう戦う!? 八虎は 【自分だけの色】 で描くことができるのか。

※引用元:映画『ブルーピリオド』公式サイト

美術館を歩く時間は好きなのに、自分の手で描くとなるとどうも不器用で──

映画『ブルーピリオド』は、そんな私にとって、創作の現場に足を踏み入れたような感覚でした。
それは思っていた以上に現実的で、思っていた以上に過酷で、そして少しだけ──物足りなくもありました。

芸大受験、その現実に驚いた

映画の中で最も印象的だったのは、芸大を目指す学生たちが描く絵の“枚数”でした。
想像を超える量のデッサンや作品に、まず驚かされました。
大学受験に塾があるのは当たり前のこと。
でも“芸術”の世界にまで、合格のための強化塾が存在するとは──考えたこともありませんでした。
自由に見えて、とてもストイックな世界。
創作の裏側にある現実を、初めて垣間見た気がします。

才能だけじゃない。時間とセンスの世界

「絵は才能の世界」という先入観を、この映画は少しずつ崩してくれます。
ひたすら描いて、迷って、捨てて、また描く。
そのプロセスには、時間との戦いと、“見る力”が欠かせないのだと感じました。
芸術は、才能だけで完結するものではない。
感性と努力が、重なっていく。
その事実は、どこか希望のようでもありました。

作品には“癖”が出る。惹かれるのは多面的な人

ブルーピリオドを通じて気づいたことがあります。
それは、表現者にも“癖”や“型”があるということ。
違うようで似た作品ばかりを描いてしまう人。
ひと目見ただけでは同じ作家だとは思えないほど、幅と奥行きのある作品を作る人。
私は後者のような人に、どうしようもなく惹かれます。
インスピレーションのような感覚で、「この人にしかできない」と感じる瞬間。
その一瞬に、静かに心を奪われてしまうのです。

こんな進路もあるのだと知る、ひとつの選択肢

美術予備校という存在を知り、「表現したい」という気持ちを未来に繋げるルートが実在することに少し驚きました。
好きなことと、進路が結びつく──
そんな道があるのだと知るだけでも、選択肢は広がります。
この映画は、芸術に関心をもつ若い人にとって、ひとつの“参考地図”になるかもしれません。

映画はほんの“入口”だった──物足りなさの理由

けれど、正直に言えば、心に残るものはそれほど多くはありませんでした。
映画全体が、ほんの少しだけ“ウワバミ(大蛇)”に触れただけのような印象。
なめらかで綺麗ではあるけれど、深みまでは届かない。
漫画の方が、キャラクターの内面や葛藤をもっと丁寧に描いているのでは──
そんな風にも感じました。
この作品に真に触れるなら、やはり原作を読むべきかもしれません。

芸術の敷居は、思っていたより低くて高かった

実写版『ブルーピリオド』は、美術の世界に足を踏み入れたことのない私に、
その入り口の景色を見せてくれました。
敷居は高いようで、案外開かれていて──
けれどその先には、果てしない道が続いている。
表現とは何か。
描くということは、どれだけ自分を差し出せるか。
この映画は、そんな問いをそっと投げかけてくる一作でした。

あとがき———表現という名の入り口で

私にとって『ブルーピリオド』は、キャンバスの前に立つことを怖れていた自分と、少しだけ向き合う時間でもありました。
どこかの誰かの“好き”や“葛藤”が、こうして映画になり、劇場の光の中で語られる。
そのこと自体が、もうすでに一つの表現であり、挑戦なのだと思います。

たとえ物足りなさを感じたとしても、それはきっと、「もっと深く知りたい」という気持ちの裏返しなのかもしれません。
静かに火を灯すような作品でした。
もしあなたが今、何かを表現してみたいと思っているなら──この映画は、その小さな背中を押してくれるかもしれません。


【次回予告】『Broken Rage』を観た後に語りたいこと

スタイリッシュなヤクザ・スリラーだと思って続きを見たら…
前半と“まったく同じ”だから敢えてこそ笑える、後半の“ちゃぶ台返しコメディ”。
北野武は、自らの“二面性”をこの66分に詰め込んだ―。

緊張感のある任務と、ぶっ飛んだコメディの往復
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このレビューを書いた人
高瀬 楓(たかせ かえで)
高瀬 楓(たかせ かえで)
映画と余韻のブロガー。  週末19時に更新中。
はじめまして。映画ブロガーの高瀬 楓(たかせ かえで)と申します。 「映画の余韻にじっくりと浸りながら、自分の視点で感じたことを丁寧に言葉にしたい」との思いから、映画レビューサイト《Silverscreen Pallet》を運営しています。 心に残るシーンやテーマを深く味わいながら、読者の皆さまの記憶に響くような記事をお届けできたら嬉しいです。

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