『シェフ! 三ツ星レストランの舞台裏へようこそ』レビュー|観るだけでお腹がすく?料理映画の魅力をネタバレなしで紹介

【ご安心ください】
※本記事には映画の具体的な結末などのネタバレは含まれません。作品のテーマや雰囲気を中心に綴っていますので、未鑑賞の方もお楽しみいただけます。
出典:YouTube / ギャガ(GAGA★)
胃袋と一緒に、心もほぐれる映画
「今日くらい、何も考えたくないな」
そんな夜に選んだのが、フランス映画『シェフ! 三ツ星レストランの舞台裏へようこそ』でした。
この映画には、頭をフル回転させる緻密な伏線や驚きの展開はありません。
けれど、観終わったあとには確かな満足感が残ります。
それは、ちょうど良く火の入ったスープのように、じんわりと体に染みわたる感覚。
軽やかなテンポ、美味しそうな音、ちょっとした笑い。
忙しない日々の中で、ふっと力を抜かせてくれる一本です。
「考察しなくていい」安心
ストーリーは決して複雑ではなく、ある程度の展開は読めてしまいます。
けれどその“わかりやすさ”こそが、この映画の魅力です。
キャラクターは王道の配置。どこかで見たことのあるような関係性ですが、それがいい。
物語の流れも王道だけれど、だからこそ変なストレスを感じず、気楽に身を預けられるのです。
ベタ寄りの笑いに、クスッとする。
誰かのセリフや表情に、ちょっと心が温かくなる。
観ているうちに、自分の体温までじわりと上がっていくような感覚がありました。
“映っていないのに美味しそう”という魔法
料理映画と聞けば、完璧な盛りつけや美しい料理の数々を想像されるかもしれません。
でもこの映画は、ちょっと違います。
実は料理そのもののカットは、あまり多くありません。
映るのは、調理中の音や素材の扱い、厨房の熱気。
けれど、それだけでお腹が空いてくるんです。
香りまで感じられそうな映像と音に、五感がじわじわ刺激されていく。
私は、画面の向こうから湯気が立ちのぼってくるような錯覚すら覚えました。
唯一、「魔法の料理」的な創作メニューだけは、ちょっと遠慮したいな……という気持ちになりましたが(笑)。
軽さの中に、人間の匂い
本作には、スカッとするような逆転劇もなければ、涙が止まらないような感動の瞬間もありません。
けれど、その代わりにあるのは、人間の不器用さに寄り添う優しさです。
自信をなくしたシェフが、表では毅然と振る舞いながらも、内心では迷っている。
夢を追いたい若者が、家庭の現実と向き合わなければならない。
そんなふたりが、ときにぶつかりながらも、料理を通じて通じ合っていく。
描かれるのはきわめて小さな世界。
でも、その静かな手触りが、観る人の心をやわらかくしてくれるのです。
この映画をおすすめしたい人
- 最近、美味しいものを食べていないなと思っている人
- 自炊のやる気がちょっと落ちている人
- 難しい映画は観たくないけど、何かやさしい物語に触れたい人
- 忙しさの中で、ふと立ち止まりたくなった人
観終わったあと、キッチンに立ちたくなるかもしれません。
あるいは、おいしいフレンチを食べに出かけたくなるかもしれません。
それはきっと、「食べたい」という気持ちを呼び起こしてくれる映画だから。
最後にそっと、「今観るべき理由」を
情報過多な毎日、つい“効率”や“刺激”ばかりを求めてしまう中で、
この映画はまるで、テーブルに出されたあたたかい家庭料理のようです。
見栄えは派手じゃないけれど、心がほっとする。
映画に“考察”や“分析”を求めない夜があってもいい。
むしろ、そんな夜こそ、この映画の出番なのかもしれません。
【次回予告】『みなに幸あれ』
次回ご紹介するのは、静かな田舎を舞台に、じわじわと心を侵食してくるホラー映画『みなに幸あれ』です。
穏やかな日常に潜む違和感は、やがて言葉では説明できない恐怖へと変わっていきます。
閉ざされた土地に根づく価値観と、そこから生まれる見えない圧力――。
現代社会にも通じる“排他性”を、あなたはどう感じるでしょうか。
どうぞお楽しみに。
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