2020年代映画

映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』感想と考察【ネタバレなし・感想】

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出典:映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』日本語公式サイト

あらすじ

(以下、公式サイトより引用)

1970年冬、ボストン近郊にある全寮制のバートン校。クリスマス休暇で生徒と教師のほぼ大半が家族と過ごすなか、生真面目で融通が利かず、生徒からも教師仲間からも嫌われている考古学の教師ハナム(ポール・ジアマッティ)は、家に帰れない生徒たちの“子守役”を任命される。学校に残ったのは、勉強はできるが家族関係が複雑なアンガス・タリー(ドミニク・セッサ)。

食事を用意してくれるのは寮の料理長メアリー・ラム(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)。メアリーは一人息子のカーティスをベトナムで亡くしたばかり。息子と最後に過ごした学校で年を越そうとしている。

クリスマスの夜。「ボストンへ行きたい。スケートしたり、本物のツリーが見たい」と言い出すアンガス。はじめは反対していたハナム先生だが、メアリーに説得され「社会科見学」としてボストン行きを承諾する。

ボストン、考古博物館にて。「今の時代や自分を理解したいなら、過去から始めるべきだよ。 歴史は過去を学ぶだけでなく、いまを説明すること」アンガスはハナム先生の言葉を真剣に聞き入る。「とてもわかりやすい。授業でも怒鳴らずそう教えてよ」

古本市、ボーリング場、映画館……ボストンを楽しむふたり。しかし、実はアンガスがボストンに来たのには、ある目的があった。ハナム先生も二度と会うはずのなかった大学時代の同級生と偶然出会う。お互いに誰にも言っていない秘密が明かされていく……。

出典:映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』日本語公式サイト

あなたが最後に“本当の意味で誰かに大切にされた”と感じたのは、いつですか?

この映画を観ながら、強くそう感じました。

それは大人でも同じなのかもしれません。

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』は、静かな愛と見捨てられる孤独、与えられなかった愛をテーマにした、心にじんわり染みるヒューマンドラマです。淡く優しい70年代の映像の中で、誰かに必要とされることの切なさや、日常の中の小さな愛の形を静かに紡いでいきます。

彼の孤独は欠落ではなく、むしろ自分で選んだ生き方のようにも見えました。

彼を取り巻く文学や歴史は、寂しさを埋める友であり、彼の孤高を支えているのです。


彼女の愛は行き場をなくし、それが寂しさとして観る者の胸にも迫りました。


母親は自分の人生を優先し、子どもを学校に置いていく。彼女の行動は、私には精神的なネグレクトに見えました。

それでも少年は最後まで愛を求め続ける。

“問題児”と言われた彼は、実は愛に飢えた子どもだったのです。

この切なさには、長期休暇に「置いてけぼり」にされた子どもが抱える寂しさが滲んでいるようで、胸が締めつけられました。

映画を観ながら、ふと胸の奥がずしんと重くなりました。

昔、身近にいた子どもが浮かんできたのです。

大人の事情に巻き込まれ、長期の休みのたびに誰かに預けられていたあの子。

見守る目があるようでいて、心には誰も入ってこない。

いつも静かに空気を読んでいたような気がします。

映画の主人公もまた、誰かにきちんと愛されたいのに、それをうまく言葉にできません。

愛がもらえない子どもは、次第に「もらえない前提」で世界を受け止めるようになるのかもしれません。

そんな姿に、私は心が痛みました。

人間の根源的な欲求である**“愛されること”**を繊細に描きながら、映像や音楽、人物の佇まいで心に残る余韻を残します。

そして、家族や社会のあり方、子どもたちの現実についても改めて考えさせられる作品です。

長引く社会の変化の中で、今だからこそこの映画を観て、静かな問いかけに耳を傾ける価値があると感じました。

この映画が伝えたかったことは何だったのでしょうか。

愛は気づかれない形でそばにあるのかもしれません。

「手を伸ばしても届かない」そのもどかしさが、誰かにとっての“冬休み”なのかもしれません。

観終わったあと、しばらく胸の奥に静かな余韻が残り、愛の意味を改めて考えさせられました。

あなたはこの映画をどう受け取り、どんな愛を感じましたか。


【次回予告】ネタバレあり感想と考察編

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』は現在、Amazonプライムビデオでも配信されています。
忘れられない余韻を、ぜひご自宅でも味わってみてください。

また、手元に置いてじっくり観たいという方には、Blu-rayやDVDもおすすめです。

このレビューを書いた人
高瀬 楓(たかせ かえで)
高瀬 楓(たかせ かえで)
映画と余韻のブロガー。  週末19時に更新中。
はじめまして。映画ブロガーの高瀬 楓(たかせ かえで)と申します。 「映画の余韻にじっくりと浸りながら、自分の視点で感じたことを丁寧に言葉にしたい」との思いから、映画レビューサイト《Silverscreen Pallet》を運営しています。 心に残るシーンやテーマを深く味わいながら、読者の皆さまの記憶に響くような記事をお届けできたら嬉しいです。
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