2025年公開映画

ミッシング・チャイルド・ビデオテープ|人間の倫理が浮き彫りになる異色ホラー

古い日本の山奥の部屋と散らばる日用品、VHS映像のざらつきと光の揺らぎを再現
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【ご安心ください】
※本記事では、映画の結末や重要シーンの具体的な内容には触れていません。雰囲気やテーマ、鑑賞の目安を中心に紹介しています。

※注意:本記事には、暴力描写、過激な表現、心理的・社会的に敏感なテーマ(家族関係、差別、精神的葛藤など)が含まれる場合があります。苦手な方や未成年の方は閲覧にご注意ください。

KADOKAWA映画 映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』予告映像


あらすじ

VHSのざらついた質感は単なる懐古趣味ではなく、記憶の“生々しさ”を呼び起こす装置です。本作は幽霊の出現と人間の倫理観の歪みを巧みに描き、視覚の不快感と心理のざわつきが共存します。あなたはこの“人間の怖さ”に耐えられるでしょうか。

【ネタバレ注意】
※本記事では、登場人物や象徴的シーンに触れ、私なりの考察や解釈を掲載しています。これより先はネタバレになりますので、物語を楽しみたい方は鑑賞後の閲覧を推奨します。

本作はVHSの質感を徹底的に作り込み、ノイズや色落ちで過去の記憶を呼び覚まします。しかし、歩行時のブレがやや過剰で、子どもが日常を撮影した自然な揺れとは異なり、演出的な違和感を覚えました。この綱引きが没入感を揺さぶる瞬間となり、観客の評価が分かれる箇所だと感じました。

怪物は登場せず、母親の霊がじわじわと心を揺さぶります。霊は断片的にしか現れず、想像力を掻き立てる余白が残されていました。私は「見せすぎない」演出により、自分の中で恐怖が増幅される感覚を持ちました。超自然より、人間の行為や心理が本作の核だと感じた瞬間です。

畳の部屋と窓から差し込む夕暮れの光、母親の幽霊の気配が漂う静寂

民宿の息子の祖母は生理を“汚れ”とみなし、山の神様に捨てる行為を孫に語ります。孫は「俺は? 母は?」と疑問を抱き、倫理と日常の狭間で恐怖を体感します。私はこの瞬間が、本作の最も生々しい怖さだと感じました。日常的行為の影響力が、幽霊の存在感を凌駕する場面です。

山道と小さな神社、古木に囲まれた陰影の強い景色、心理的緊張を象徴する静かな風景

ラストで13年前の弟の服が発見されますが、あまりに綺麗すぎる点に違和感を覚えました。時間経過による劣化を期待していた観客には現実味を削ぐ場面です。ただ、この違和感も物語体験の一部として提示し、評価が分かれる点だと読者に伝えられると感じました。

廃墟の建物内部、窓から差し込む光と埃、青い子供用ウィンドブレーカーが静かに置かれた違和感ある空間

本作はジャンプスケアを避け、環境音で緊張感を持続させます。熊よけの鈴の音が印象的で、生活感と異様さを繋ぐ音響的な紐として機能します。私はこの静かな演出に、映像劣化との相乗効果で恐怖が長く尾を引くと感じました。

超自然と倫理の交差を軸にホラーが展開されます。怪異よりも、怪異に対する人々の振る舞いが問いを立てます。「あなたならどうするか」と読者に問いかける切り口を提示することで、記事の価値が増すと感じました。違和感に敏感な観客には冷めて映る可能性もある、二面性を明確に伝えられる点が独自視点です。

🔗 関連作品・参考情報

🎬近藤亮太監督

・過去作・関連作品:
-『○○式』(2025年)
-TXQ FICTION『魔法少女山田』:プロデューサー(2025年)

🎭杉田雷麟

・過去作・関連作品:
-『半世界』(2019年)
-『あるいは、ユートピア』(2024年)

🎭平井亜門

・過去作・関連作品:
-『早乙女カナコの場合は』(2025年)
-『パーフェクト・シェアハウス』(2025年)


【次回予告】『ベイビーガール

次回は、心理の綾と欲望の衝突が交錯するスリリングな世界へ。ニコール・キッドマン演じるロミーが抱える渇きと力関係の逆転劇は、あなたに何を問いかけるだろうか。緊張感あふれる一瞬一瞬に、目が離せなくなること必至です。

このレビューを書いた人
高瀬 楓(たかせ かえで)
高瀬 楓(たかせ かえで)
映画と余韻のブロガー。  週末19時に更新中。
はじめまして。映画ブロガーの高瀬 楓(たかせ かえで)と申します。 「映画の余韻にじっくりと浸りながら、自分の視点で感じたことを丁寧に言葉にしたい」との思いから、映画レビューサイト《Silverscreen Pallet》を運営しています。 心に残るシーンやテーマを深く味わいながら、読者の皆さまの記憶に響くような記事をお届けできたら嬉しいです。
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