映画『ニッケル・ボーイズ』感想|希望と絶望の物語
【ご安心ください】
※本記事には映画の具体的な結末などのネタバレは含みません。作品のテーマや雰囲気を中心に綴っていますので、未鑑賞の方もお楽しみいただけます。
※注意:本記事には、暴力描写、過激な表現、心理的・社会的に敏感なテーマ(家族関係、差別、精神的葛藤など)が含まれる場合があります。苦手な方や未成年の方は閲覧にご注意ください。

総合まとめ
国内平均星評価:3.40/5
海外平均星評価:3.59/5
※このチャートは、確認できた国内外の評価サイトのスコアをもとに作成しています。
未評価のサイトは平均に含めていません。あくまで参考としてご覧ください。
あらすじ
(以下、公式サイトより引用)
引用(原文)
Based on the Pulitzer Prize winning novel by Colson Whitehead, Nickel Boys chronicles the powerful friendship between two young Black teenagers.
出典: MGM公式サイト
日本語訳(参考訳)
コルソン・ホワイトヘッドのピューリッツァー賞受賞小説を原作とし、『Nickel Boys』は二人の黒人少年の強い友情を描いています。
要約あらすじ(オリジナル)
以下は本作の背景を踏まえた簡単なあらすじです。
1960年代のフロリダ州。理不尽な暴力と差別が支配する少年院「ニッケル・アカデミー」に送られたエルウッドは、非暴力と希望を胸に日々を過ごそうとします。そこで出会った現実主義者のターナーと友情を育む中、二人は制度の残酷さと向き合いながら、それぞれの生き方を模索していきます。
出典:Nickel Boys – Official Trailer. Amazon MGM Studios. YouTube.
1960年代、フロリダ州の少年院「ニッケル・アカデミー」。虐待と理不尽が支配する場所で、ひとりの少年が倫理と希望を貫こうとします。映像と心理描写で描かれる絶望と光の物語に、胸を打たれました。
希望を貫く少年の姿
エルウッドは、暴力と不正が横行するニッケル・アカデミーでも、非暴力を貫き、法と正義への信頼を失いません。他の少年たちが権力者に屈する中、彼は規則を守り、自己と他者の尊厳を守ろうと努めます。虐待や理不尽な罰に直面しても絶望せず、将来への希望を抱き続ける姿には、深い感動を覚えました。倫理観と希望の象徴として描かれる彼の行動は、観客に強い共感を生みます。

ターナーとの友情と現実主義
対照的にターナーは現実主義で、生存を優先するため時に妥協もします。エルウッドとの友情を通じて、希望と現実の間の緊張感が鮮明になります。また、他の少年たちの恐怖や従順、時には反発する姿も描かれ、制度の理不尽さが一層際立ちます。ある少年が抗おうとして罰を受ける場面では、観客として制度の冷酷さと絶望感を強く感じました。

光と影が映す心理的緊張
映画は映像で希望と絶望を巧みに描きます。施設内は陰影が強く閉塞感を演出し、屋外は明るい光が自由と希望を象徴します。特に印象的なのは、エルウッドが施設の外の光景を見つめる長回しのシーンで、自由への渇望と現実のギャップが際立ちます。また、エルウッドとターナーが心を通わせる場面では手持ちカメラが接近視点を生み、友情の温かさを伝えます。虐待の現場は過激な描写を避けつつ、制度の残虐性を静かに突きつける手法が印象的でした。

制度と倫理の交差点
映画全体を通して浮かび上がるのは、個人の倫理観と制度の残酷さの対比です。エルウッドの行動は、単なる物語上のヒーロー像ではなく、制度に立ち向かう個人の尊厳と希望を象徴しています。観客は絶望的な状況でも、希望を捨てない姿勢の尊さに心を打たれました。現実の史実を基にした物語だからこそ、倫理や尊厳、友情の価値がより深く響きます。
今この映画を見る理由
歴史的背景と現代社会に通じるテーマが交錯する本作は、観ることで倫理や希望について考えるきっかけになります。冬の静かな夜、光と影の描写が際立つスクリーンで、重いテーマを丁寧に描く本作を鑑賞する価値は大いにあると感じました。
【次回予告】『ラストマイル』
物流業界最大のブラックフライデーを舞台に、未曾有の爆破事件が発生――。新人センター長・舟渡エレナとチームマネージャー・梨本孔は、緻密な謎解きと危険な状況の中で、信頼とチームワークの力を試されます。
『ラストマイル』は単なるサスペンスではなく、現代社会の人間関係やリーダーシップを浮き彫りにする作品です。次回の記事では、エレナの奮闘とチームの絆、そして予測不能の事件の真相に迫ります。劇場で体感する緊張感と共に、次回レビューもお楽しみに。

