少女映画

PIGGY ピギー|観ると心がざわつく、誰も語らない心理スリラー感想

雨に濡れた地方都市の通り、孤独感と緊張感が漂う街の風景
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【ネタバレ注意】
本記事では映画『ピギー』の登場人物や象徴的なシーンに言及しています。物語の印象を大切にされたい方は、鑑賞後のご一読をおすすめいたします。

出典:アルバトロス・フィルム公式サイト『ピギー』


あらすじ

映画『ピギー』は、いじめに苦しむ少女サラの視点で進む心理スリラーです。観ていてまず印象的なのは、サラの孤独の描写が徹底していることです。家庭でも学校でも居場所を失った彼女は、見る者に強い共感と同時に息苦しさを感じさせます。特に生理のシーンでは、身体的な無力感と周囲からの無神経な対応が重なり、サラの心がいかに追い詰められているかが痛切に伝わってきました。この描写は、単なる恐怖演出ではなく、「他者に認められない状況が心に与える影響」を観客に突きつける巧妙な演出と感じました。

暗い部屋で閉ざされたカーテンと散らばる教科書、サラの心理的緊張を象徴する空間

サラを取り巻く恐怖の中心に、連続殺人鬼の存在があります。一見すると単なるスリラーの敵役に見えますが、実際にはサラの抑圧された復讐心や葛藤を映す鏡として機能しています。プールの監視員やいじめっ子たちへの襲撃は、サラの目を通して描かれることで、彼女自身が行動するわけではなく、他者による「代行」として表現されています。この構造により、観客は「自分ならどうするか」と考えながらサラの心理を追体験できる点が、他の映画レビューでは触れられにくい独自の魅力です。

霧に包まれた森や廃墟、濡れた地面と枝が不安と危険を示すスリリングな風景

母親のキャラクターも重要な要素です。セリフや行動から、愛情はあるものの、表現方法が過干渉であり、結果としてサラの自己肯定感を削ぐ描写が際立っています。他者への高圧的な態度は、サラだけでなく観客にも不快感と緊張感を与え、家庭環境が心に与える影響を具体的に感じさせます。これは「家庭の中で育まれる心理的圧力」というテーマの象徴的表現として、非常に考察しがいがあるポイントです。

物語のクライマックスでサラは、拉致されたいじめっ子たちの拘束を解こうと葛藤し、最終的に自身の意思で殺人鬼に刃を向けます。この瞬間、彼女の変化は「他者」由来のものから「自分の選択」によるものへと転換します。犯人との闘いを経て、サラが縄を撃ち抜くシーンは、もはや「助けられる少女」ではなく、自立した主体としての姿を象徴しており、観客に深い達成感とカタルシスを与えます。この点は、映画の心理的テーマと結びつけた独自の考察として読者に価値を提供できます。

朝の静かな広場、切れた縄と柔らかい光が自己決着と解放の象徴を示す風景

『ピギー』は単なるホラーやスリラーではなく、「孤独」「他者の認め」「自己決着」という普遍的な心理テーマを掘り下げた作品です。春休みや夏休みの時間がある今、心理描写の深い映画をじっくり観たい方に特におすすめです。観ることで、登場人物の心情を追体験し、自分自身の感情や人間関係を見つめ直す契機になるでしょう。家庭や学校での圧力に悩む読者にも、多くの示唆を与えてくれる作品です。


【次回予告】『ババンババンバンバンパイア』

次回は『ババンババンバンバンパイア』! 450歳のバンパイアが銭湯で巻き起こすハチャメチャなラブコメディです。

初恋阻止に奮闘する主人公のドタバタ劇は、笑いとドキドキが絶妙に交差。

吉沢亮や板垣李光人の豪華キャストによるコミカル演技と、伝統文化×ファンタジーのユニークな世界観は、前作とはまた違った軽やかな人間ドラマを届けます。

次回は、肩の力を抜いて、愛と混乱の渦に飛び込むひとときを楽しんでみませんか?

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このレビューを書いた人
高瀬 楓(たかせ かえで)
高瀬 楓(たかせ かえで)
映画と余韻のブロガー。  週末19時に更新中。
はじめまして。映画ブロガーの高瀬 楓(たかせ かえで)と申します。 「映画の余韻にじっくりと浸りながら、自分の視点で感じたことを丁寧に言葉にしたい」との思いから、映画レビューサイト《Silverscreen Pallet》を運営しています。 心に残るシーンやテーマを深く味わいながら、読者の皆さまの記憶に響くような記事をお届けできたら嬉しいです。
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