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映画『サブスタンス』レビュー|老いは悲劇か?価値を失う恐怖を問う問題作

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映画『サブスタンス』は、老いと価値という永遠のテーマを、奇抜とも言える設定で可視化していきます。

若さを価値として消費する社会を背景に、主人公が直面する恐怖は、単なる「老いの不安」ではなく、

価値の置き場所を見誤った結果としての悲劇

のように響きました。

この映画を通じて、私たちは自分自身の価値観を鏡の前に突きつけられるような感覚に陥ります。

【ご一読ください】
本記事は、物語の核心部分には触れず、作品全体の空気感やテーマ性、鑑賞時の参考となる観点を中心に構成しています。

また、作品によっては、人間関係や社会的な題材、心理的な揺らぎを扱う場面が含まれることがあります。ご自身の感受性や鑑賞環境に応じて、無理のない形でお楽しみください。

総合まとめ

国内平均星評価:3.91/5

評価 :4/5。

海外平均星評価:3.65 /5

評価 :3.5/5。

※このチャートは、確認できた国内外の評価サイトのスコアをもとに作成しています。
未評価のサイトは平均に含めていません。あくまで参考としてご覧ください。

あらすじ

ギャガ公式チャンネル映画『サブスタンス』本予告


【ネタバレ注意】
※本記事では、登場人物や象徴的シーンに触れ、私なりの考察や解釈を掲載しています。これより先はネタバレになりますので、物語を楽しみたい方は鑑賞後の閲覧を推奨します。

物語の中心にいるのは、外見と若さを“価値”として生きてきた主人公です。

彼女の選択は、誰にでも理解できる自由な選択でした。しかしその世界には、必ず寿命や限界があることを最初から内包していたはずです。

にも関わらず、主人公は未来を見据えて計画を立てることをせず、名声や外見価値の喪失に直面した時、その現実を受け入れきれないまま苦悩を深めていきます。

この点は、社会が求める価値と個人の人生設計とのズレを鋭く浮かび上がらせています。

劇中で、ある人物が主人公に対して示す関心は、外見ではなく 内面の魅力に根差していました。

それにもかかわらず、主人公は自らの「若さ」という物差しでその関係を切り捨ててしまいます。

これは、若さや外見を価値の基準に置くことがいかに有害であるかを象徴しているように思えました。

年齢を重ねた人間が、過去の自分と同じ土俵で戦おうとすること自体が、本質的な誤解ではないか、と感じたのです。

外見ではなく内面の魅力が見過ごされる瞬間を静かな室内と柔らかな光で表現したイメージ

“若い自分”として立ち現れるスーは、単なるクローンでも代理でもなく、主人公の内面を映す存在として機能します。

スーが暴走しはじめるとき、それは主人公が抱えてきた恐怖と執着が、より強い形で露出しているようにも思えました。

そして、主人公が再びサブスタンスを選択した瞬間、問題の核心は、老いそのものよりも価値を見失ったまま進んできた自己認識の曖昧さにあることが明確になっていきます。

主人公の恐怖や執着を映す存在スーを二重像と歪みで描いた不安定なビジュアル表現

終盤、演出的な密度が高まるにつれて、鑑賞者への刺激も強まります。

けれど、そうしたビジュアル先行の演出が、必ずしもテーマの深掘りに貢献しているとは言い難い面もありました。

映画が本来問いかけようとしていた「老いとは何か」「価値とは何か」という問題は、視覚の終点に置き換えられてしまったような印象があります。

老いと価値の問いが視覚的インパクトに飲み込まれていく様子を抽象的に表した象徴的イメージ

監督 コラリー・ファルジャ は、前作『REVENGE リベンジ』(2018年)でも、視覚的強度とテーマ性の融合に挑んできました。本作でも同様に、身体や価値の物語を扱いながら、社会が描く価値観への疑問を提示しています。

その試みは評価に値しますが、『サブスタンス』では、問いの深さと演出の強さのバランスが揺れているように感じられました。

『サブスタンス』は、単なるホラーやショック表現に留まらず、私たちが普段は意識しない「価値」の構造を可視化しています。

その問いは刺激的であり、鑑賞後の思考を促します。

ただ、問いそのものの明確な結論に至らず、視覚の圧力によって終着してしまった感覚が残りました。

それでも、この映画が投げかける「老いと価値をどう捉えるか」という命題は、観客の内面に問いを落とす力を持っています。

若さの価値に縛られない人生とは何か――その問いと向き合う映画でした。

🔗 関連作品・参考情報

🎬コラリー・ファルジャ監督

・過去作・関連作品:

  • 『リベンジ/REVENGE 』(2017年)

🎭デミ・ムーア

・過去作・関連作品:

  • 『ゴースト ニューヨークの幻/Ghost』(1990年)
  • 『ア・フュー・グッドメン/A Few Good Men』(1992年)

🎭マーガレット・クアリー

・過去作・関連作品:

  • 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド/Once Upon a Time in… Hollywood』 (2019年)
  • 『マイ・ニューヨーク・ダイアリー/My Salinger Year』(2020年)

今日の色彩:くすんだベージュ
― かつての輝きが完全には消えず、しかし戻らない色。

今日のかけら:
老いは失うことではなく、価値を移す作業なのかもしれない。

今日のひとしずく:
「終わりがあるからこそ、準備が必要になる。」


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このレビューを書いた人
高瀬 楓(たかせ かえで)
高瀬 楓(たかせ かえで)
映画と余韻のブロガー。  週末19時に更新中。
はじめまして。映画ブロガーの高瀬 楓(たかせ かえで)と申します。 「映画の余韻にじっくりと浸りながら、自分の視点で感じたことを丁寧に言葉にしたい」との思いから、映画レビューサイト《Silverscreen Pallet》を運営しています。 心に残るシーンやテーマを深く味わいながら、読者の皆さまの記憶に響くような記事をお届けできたら嬉しいです。
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