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COLUMN:『ターナー日記』とは何か?——フィクションが現実を殺した日

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出典:The Order | Official Trailer | Prime Video


※本コラムには映画『The Order(2024)』の一部シーンに関する言及が含まれます。
ストーリーの核心的なネタバレは避けていますが、印象的なシーンや作品のテーマ解釈について触れています。
ご鑑賞前にまっさらな状態で楽しみたい方は、ご注意ください。

【ご注意ください】
本記事では、過去に実在した事件や、過激な思想と見なされている書籍について言及しています。これは、事実関係やその表現が社会に与えた影響を検証することを目的としたものであり、特定の思想、暴力行為、または過激な主張を肯定・推奨する意図は一切ありません。


実際に起きたことを描いており、そして今もどこかで続いている現実があります。過激思想が若者を呑み込み、理想の名のもとに暴力が正当化される――現実は決して過去の話ではありません。

だからこそ、作品が放つ“気味の悪さ”や“腑に落ちなさ”から目をそらさず向き合うことが、私たちに課せられたひとつの「責任」なのだと思います。脚色か事実かを見分けることは難しい。しかしその曖昧さの中で揺れながら、「これは本当に自分の生きている世界なのか」と問い続けること。それこそが、最も誠実な鑑賞の態度ではないでしょうか。

それは、「自分は選ばれし者だ」「自分の怒りは正当だ」と感じさせる物語の力にあります。
ほんの少しの事実を混ぜ込むだけで、人は驚くほど簡単に信じてしまうのです。

荒廃したアメリカの小都市、崩れた建物と散乱する新聞、緊張感と不穏な空気
古い図書室の机に広がる本、飛び散るページ、思想が現実に影響を与える様子
  • 架空の人物名ながら、どこか見覚えのある地名や組織
  • 実際の政治問題を土台にしたプロパガンダ風描写
  • 「これは起こり得る未来だ」と思わせる予言書のような語り口
  • 1995年のオクラホマシティ爆破事件(ティモシー・マクベイ)
  • 特定の人種や宗教を標的にした無差別殺傷事件
  • グループ「The Order」による違法行為

これらの加害者には、共通する傾向が見られました。

  • 家庭内での放置や強権的な育てられ方
  • 軍や社会への不信感
  • 「自分は社会の外側にいる」という疎外感と怒り

人は物語と現実を区別しているつもりでも、感情ではつながってしまうことがあります。
アメリカでは、嫌な役を演じた俳優に対して観客が過剰反応したり、リアリティ番組の演出を知らずに「本物の人間だ」と信じ込む例もあります。

つまり、空想に感情を移入しすぎることで、現実との境界があいまいになりやすい土壌が文化として存在しているのです。

あとがき

孤立した建物と霧に包まれた道、孤独感と内面の怒りを象徴する風景

映画をより深く理解するための補足コラム(ネタバレあり)

▶ COLUMN:『ターナー日記』はなぜ“バイブル的な存在”になったのか──映画『The Order』と排他的な民族思想のナラティブ構造を読む

なぜこの小説は、これほどまでに過激な思想を引き寄せ、実行に駆り立てたのか?本作が映し出す「思想の伝播」と「物語の力」について、過激な行動に至った組織との関係をたどりながら考察しました。

COLUMN:『ターナー日記』はなぜ“バイブル的な存在”になったのかへ


作品をすでにご覧になった方へ

物語の核心に踏み込んだネタバレありの感想・考察記事も公開しています。
実在の事件や『ターナー日記』との関連を含め、映画がなぜ“今”作られたのか、その問いに迫りました。
『The Order(2024)』ネタバレあり感想・考察|実話が残した“終わらない戦慄”を観る

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このレビューを書いた人
高瀬 楓(たかせ かえで)
高瀬 楓(たかせ かえで)
映画と余韻のブロガー。  週末19時に更新中。
はじめまして。映画ブロガーの高瀬 楓(たかせ かえで)と申します。 「映画の余韻にじっくりと浸りながら、自分の視点で感じたことを丁寧に言葉にしたい」との思いから、映画レビューサイト《Silverscreen Pallet》を運営しています。 心に残るシーンやテーマを深く味わいながら、読者の皆さまの記憶に響くような記事をお届けできたら嬉しいです。
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