ゆりかごを揺らす手:リメイク版レビュー|不穏の音と母性の不協和に迫る
今、この映画を見る理由
平和に見える家庭の中で、ほんの小さな音や行動が不安を呼び込む──赤ちゃんの泣き声がおもちゃにおうむ返しされる瞬間、観客は胸の奥に冷たい不協和音を感じます。リメイク版では、原作と異なる心理的な焦点が設定されており、復讐心や母性の葛藤を現代的に再解釈。これを今観ることで、日常の平穏とその裏側に潜む心理の揺らぎを味わえます。
【ご安心ください】
※本記事では、映画の結末や重要シーンの具体的な内容には触れず、雰囲気やテーマ、鑑賞の目安を中心に紹介しています。
※注意:暴力描写、過激な表現、心理的・社会的に敏感なテーマ(家族関係、差別、精神的葛藤など)が含まれる場合があります。苦手な方や未成年の方はご注意ください。
あらすじ
ベビーシッター・ポリーの存在が家庭に影を落とす中、母親ケイトリンは彼女の危険性を察知しつつも行動には移せず、次第に心理的に追い詰められていく。家族とシッターとの間に生まれる緊張感、そして見えない復讐の意図がじわりと日常を侵食していく。リメイク版では、原作よりも現代的視点で家族間の心理戦が描かれています。
ディズニープラス『ゆりかごを揺らす手』|予告編|
【ネタバレ注意】
※本記事では、登場人物や象徴的シーンに触れ、私なりの考察や解釈を掲載しています。これより先はネタバレになりますので、物語を楽しみたい方は鑑賞後の閲覧を推奨します。
冒頭の不穏な静けさと心理的揺らぎ
ポリーと赤ちゃんが家に残されると、赤ちゃんは泣き始め、おもちゃが鳴き声をおうむ返しにする。ポリーは赤ちゃんを優しく下ろすだけで手を差し伸べず、大きな窓から外を眺める。この日常の中の異質な行動が、「何かが起こる」という心理的予感を観客に植え付け、映画全体の不安の土台を作る。
シッターの正体と家庭内の微妙な力関係
ポリーはベビーシッターでありながら、家族に微妙な影響を与える存在。母親がバイセクシャルという設定が加わることで、ポリーとの心理的攻防や夫婦関係の複雑さに新たな層が生まれる。抗うつ剤を飲む母親の発言や行動の信憑性を疑わせる演出も巧妙で、観客に家庭内の心理ゲームを意識させる。

復讐の動機と倫理の問い
リメイク版では、家族が放火で亡くなったことがポリーの復讐心を動かす。観客は「やられたらやり返す」という単純な道徳と、知性や倫理を用いた行動との対比を考えさせられる。原作では限定的な逆恨みが動機だったが、リメイク版は誰もが理解できる復讐心に置き換わり、物語の普遍性は高まる一方で、恨みの深みはやや薄れる。

恐怖演出と不快感の操作
血液採取のシーンでは、母親ではなく友人スチュワートが血液を紅茶カップに垂らして採取する。この行為自体は物語上不要で、観客に不快感を与えるだけの演出となっている。一方、抗うつ剤の扱いは母親の言動の信憑性を揺らす演出として機能し、心理的緊張を巧みに作り出している。

オリジナルとの比較で見える演出の差異
オリジナルでは、シッターが赤ちゃんの世話を通して母親の信頼を逆手に取る演出があった。リメイク版では恐怖表現や復讐の動機が整理され、理解しやすく変更されている。母親のバイセクシャル設定やポリーの存在感により心理的攻防は新たな層を得た一方、オリジナルのようなドロドロとした恐怖や信頼破壊の深みはやや弱まっている。
🔗 関連作品・参考情報
🎬ミシェル・ガルザ・セルベラ 監督
・過去作 / 関連作品
- 『Huesera: The Bone Woman』(2022) — ガルザ・セルベラの長編デビュー作で母性をモチーフにしたホラー。
🎭 マイカ・モンロー
・過去作 / 代表作
- 『イット・フォローズ/It Follows』(2014)
- 『ロングレッグス/Longlegs』(2025) — モンローが主演を務め、心理ホラーで注目を集めている。
🎭 メアリー・エリザベス・ウィンステッド
・過去作 / 代表作
- 『10 クローバーフィールド・レーン/10 Cloverfield Lane』(2016)
- 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY/Birds of Prey (and the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn)』(2020)
今日の色彩:薄灰色と深藍色
赤ちゃんの泣き声とおもちゃの不協和音が生む微妙な不安、家の静寂と外光の対比が心理的揺らぎを象徴する色合いとして。
今日のかけら:
復讐心は誰にでも芽生える。しかし理性と道徳を用いて行動を選択できる私たちこそ、人間としての余白を持つ存在だと感じる。
今日のひとしずく:
「平和の象徴が、不意に恐怖の兆しに変わる瞬間を、私たちは見逃せない。」
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