映画『ドント・ウォーリー・ダーリン』感想|理想世界の裏側を探る
【ネタバレ注意】
本記事では映画『ドント・ウォーリー・ダーリン』の登場人物や象徴的なシーンに言及しています。物語の印象を大切にされたい方は、鑑賞後のご一読をおすすめいたします。
※注意:本記事には、暴力描写、過激な表現、心理的・社会的に敏感なテーマ(家族関係、差別、精神的葛藤など)が含まれる場合があります。苦手な方や未成年の方は閲覧にご注意ください。
出典:ワーナー・ブラザース映画『ドント・ウォーリー・ダーリン』公式サイト
あらすじ
(以下、公式サイトより引用)
完璧な生活が保証された街で、アリスは愛する夫ジャックと平穏な日々を送っていた。
そんなある日、隣人が赤い服の男達に連れ去られるのを目撃する。
それ以降、彼女の周りで頻繁に不気味な出来事が起きるようになる。
次第に精神が乱れ、周囲からもおかしくなったと心配されるアリスだったが、
あることをきっかけにこの街に疑問を持ち始めるー。
1950年代を模した理想的な町に暮らす夫婦。完璧に見える生活の裏で、仮想世界の不穏な秘密が少しずつ明らかになっていきます。現実と幻想が交錯する物語に、観るたびに違和感と好奇心が入り混じる体験ができると感じました。

理想の街の違和感
『ドント・ウォーリー・ダーリン』の舞台は、一見完璧に整った50年代風の町並みですが、微妙な違和感が随所に漂っていました。男性は外で働き女性は家を守るという伝統的構図が薄く、現実の50年代とは少しズレています。この違和感が、物語全体に微妙な緊張感を与え、観客として仮想世界の不自然さを意識せざるを得なかったと感じました。また、主人公がバスを降り損ねて町の外の砂漠のような空間に出るシーンでは、理想世界の危うさが視覚的に強調され、SF的魅力を深く感じました。

倫理の境界線
物語の中で特に印象的だったのは、夫が奥さんを現実世界で機械に繋ぎ、仮想世界で“理想の妻”として生かす場面です。この行為は倫理的に大きな問題を孕んでおり、観客として強い違和感と反発を覚えました。仮想世界の理想生活が他人の自由を奪う手段として描かれることで、物語は単なるSFユートピアではなく、人間心理と倫理の問題も同時に提示していると感じました。
映像の美しさと疑問
映像演出は非常に精緻で、理想化された町並みと現実の危うさの対比が鮮やかです。一方で、性的描写は物語の進行上必須ではなく、個人的には不要だと感じました。監督のインタビューを読んでも意図や効果が理解できず、話の印象を変えるよりも、視聴者としては戸惑いの方が残ったと思います。しかし全体としては、映像による世界観構築の巧みさが際立ち、作品の魅力を損なうことはありませんでした。
テーマは自由に読む
本作のテーマは明確ではありません。男性の古い価値観への批評なのか、ジェンダーや社会批評なのかは不明瞭です。ただ、その曖昧さが逆に自由に作品を楽しむ余地を生んでおり、SFユートピア映画として純粋に仮想世界の不思議さを味わうことも可能だと感じました。また、隣人や住人の多様な反応を通して、理想世界の危うさや個人の自由意志の重要性を自然に考えさせられる点も印象的でした。

今この映画を見る理由
現実と幻想が交錯するSFユートピア世界を体験できるのは今だけ。理想と危うさのコントラストを楽しみたい方に、観る価値があると感じました。
【次回予告】『ニッケル・ボーイズ』
過去の傷は、土の下に埋めても消えない──。次に取り上げるのは、アメリカ南部に実在した少年矯正施設を題材にした衝撃作『ニッケル・ボーイズ』です。
友情と裏切り、正義と沈黙。そこで生き延びるための選択は、少年たちの未来をどう変えてしまうのか。
歴史の闇を直視させる物語に、ご期待ください。
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