映画『マレフィセント2』レビュー・考察【ネタバレあり】|強さ、美しさ、そして“彼女の弱さ”に惹かれて

【ネタバレ注意】
本記事では映画『マレフィセント2』の登場人物や象徴的なシーンに言及しています。物語の印象を大切にされたい方は、鑑賞後のご一読をおすすめいたします。
出典:YouTube / ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
あらすじ
(以下、公式サイトより引用)
永遠の眠りから目覚めたプリンセス、オーロラ姫とフィリップ王子の結婚は人間と妖精の間に平和をもたらし、世界を幸福に導くはずだった。
しかしその婚礼には、マレフィセントとオーロラ姫の絆を引き裂き、妖精界を滅ぼそうとする恐るべき罠が隠されていた…。
迫り来る危機から愛するオーロラ姫を救うために、マレフィセントが背負った驚くべき運命とは—。
きっかけは、心を射抜かれた“闇の美しさ”
マレフィセント2を観ました。
一作目で惹きつけられたのは、アニメの中のマレフィセントが実写化されたような美しさだけでなく、ゾクッと寒気が走る“闇の美しさ”、そして自分の奥底にも共鳴するような「内なる強さ」を感じたことでした。
でも今回2作目を観たのは、それだけではなく、「美しさと強さ」の裏にあるマレフィセントの弱さや迷いに触れたいと思ったから。そして、彼女の存在の奥行き――ただのヴィランでもヒロインでもない、深い感情と揺らぎを湛えた存在だからこそ、世界観に引き込まれるのだと思います。
世界観の進化と、より自由になったファンタジー
『マレフィセント2』は、ディズニーが原作を元に独自に展開した完全オリジナルストーリーです。『眠れる森の美女』から派生したマレフィセントの物語を、さらにその先へと広げた続編で、オーロラ姫とフィリップ王子の婚約を発端に、人間と妖精の世界の対立と和解が描かれます。
物語にはマレフィセントと同じ種族「ダークフェイ」も登場し、彼女のルーツにも迫っていきます。1作目と比べると、より自由でファンタジー色の強い物語展開になっていると感じました。ディズニーだからこそ描けるビジュアルと世界観に加え、脚本の自由度も少しだけ広がっていたように思います。
ヴィランだからこそ、こんなにも魅力的
なかでも注目したいのは、ヴィランであるはずのマレフィセントが放つ圧倒的な魅力です。
美しく、強く、時に冷たく見えるけれど、そのすべてに理由があり、ただの悪役には収まらない奥行きがある。ヒーローやヒロインが「愛」「夢」「希望」を掲げ、多少の犠牲をも肯定して領土を広げていくような存在だとすれば、ヴィランは自分のテリトリーを守るために最小限の力で応じる。
自らの責任で守れる世界の中に生きているヴィランたちは、むしろ自己解析ができる存在であり、ポリシーとルールを持った奥ゆかしい生き物なのではないかと感じました。
その象徴のようなキャラクターがマレフィセントです。彼女が「怒り」や「嫉妬」に動かされる場面があっても、それが衝動ではなく背景にしっかりとした理由や悲しみがある。だからこそ、その一挙手一投足に説得力があり、魅力があるのだと思います。
もうひとりの“敵役”が投げかける問い
一方で、物語を通して一貫して「嫌なやつ」だったのがフィリップ王子の母・イングリス王妃。妖精を完全に排除しようとする冷酷な姿勢、結婚を政治の道具に利用する策略家ぶり、そしてマレフィセントを貶めようとする執念深さ……彼女に共感する余地はほとんどなく、ラストの罰もやや物足りないほどでした。
個人的には、ヤギではなく、コウモリやカエルのような「妖精の立場」を強く感じさせる存在に変えられていたら、もう少し因果応報としての説得力があったのではないかと思っています。妖精としての生きづらさを体験し、マレフィセントの世界の価値観に触れた末に、それでもなお「マレフィセントのせい!」と怒り狂う姿を想像すると、それはそれで痛快でした。
ただ、これはディズニー映画。子どもも観る作品として、あえて“ヤギ”という少しユーモラスで過激すぎない落としどころを選んだのかもしれません。
心で感じる映像体験と、空気の重み
この作品が与えてくれるのは、単なる「映像美」だけではありません。
静かな森のざわめき、黒い羽が風を切る音、マレフィセントのまなざしに漂う哀しみ。スクリーン越しに感じたその空気感は、まるでこちらまで呼吸を合わせてしまうような密度を持っていました。
ただ観るだけでなく、「感じる」映画。それが『マレフィセント2』です。
子どもと観ても安心?実体験からの視点
ちなみに、レーティングは日本ではPG-12、アメリカではPG。
少し暗いシーンや死に関わる描写もありますが、全体のトーンは抑えめで、緊張感がこの作品の深さに通じているようにも感じました。
暴力的・残酷な描写は控えめで、恐怖を煽るような演出もトーンを抑えてあります。お子さんの年齢や感受性にもよりますが、しっかり一緒に観て語り合える映画だと思います。
いま観るべき、“ヴィランの物語”
マレフィセントのビジュアルや存在感の美しさ、物語に込められた「異なる者同士が共存することの難しさと希望」、そしてヴィランという立場だからこそ語れる正義のかたち。
善悪の境界が曖昧なこの時代に、マレフィセントの黒い翼は、誰かの正義が誰かの苦しみになることを、そっと問いかけてきます。
ディズニーの美術と物語が織りなす幻想的な世界に、ただ浸るだけでも価値がある。けれどもし今、何かを“感じたい”と思っているなら――この映画は、あなたの心に何かを残してくれるかもしれません。
【次回予告】『PERFECT DAYS(パーフェクト・デイズ)』
美しさと強さの陰に潜む「孤独」と「迷い」を見つめた『マレフィセント2』の先に――
次回は、東京の喧騒の中で“静けさ”とともに生きる男の物語へ。
ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演。
言葉では語られない感情が、木漏れ日とともに心を照らす映画『PERFECT DAYS』を、次回じっくりとご紹介します。
静かに、丁寧に生きるとはどういうことか。
“完璧な日々”が問いかける、あなた自身の「生き方」。
公開中の本作が気になる方は、ぜひ次回のレビューもお楽しみに。
『マレフィセント2』は現在、Amazonプライムビデオでも配信されています。
忘れられない余韻を、ぜひご自宅でも味わってみてください。
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また、手元に置いてじっくり観たいという方には、Blu-rayやDVDもおすすめです。
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